今やビジネスの成長に欠かせないWebマーケティング。しかし、マーケティングの領域は広く、どこから手を付ければよいか分かりにくいと感じている担当者も多いでしょう。当記事では、大企業やベンチャー企業で新規事業のグロースハックを担当した筆者が、新人マーケター向けに、マーケターに求められるスキルや業務の流れ、おさえるべきポイント、勉強の仕方を解説します。※当記事は、Webマーケティングの成果向上に効果的な診断作成ツール「ヨミトル」を提供するピクルスが監修していますマーケティングとは マーケティングの本質は、顧客のニーズを深く理解し、顧客にとって本当に価値のある商品やサービスを作り出し、浸透させ、企業と顧客の良い関係をつくりあげることです。 一括りに「商品やサービスを販売するための活動」と定義されることもありますが、単に広告や宣伝を行うことではありません。 「売り方」の技術に終始せず、顧客の声に耳をかたむけ、顧客の満足度を高めてファンを増やしていくことで、自社と顧客双方にとっての長期的な利益につながります。マーケティング担当者に求められるスキル マーケティング担当者の役割は、企業が提供する商品やサービスの価値を最大化したうえで、その価値を効果的に顧客に伝え、事業の成長に貢献することです。そのために、マーケティング担当者には、以下のスキルが求められます。顧客を理解するスキル商品やサービスの価値をつくるスキル言語化するスキル言語化スキル価値を浸透させるスキル以下にて詳しく解説します。顧客を理解するスキル マーケティング担当者は顧客を深く理解することが求められます。なぜならば、商品やサービスは価値がなければ購買の対象になりません。顧客が求めるものを知らなければ価値ある商品やサービスを創り販売することができないからです。市場調査、データ分析、アンケート、ユーザーインタビューを通じて、顧客のニーズ、課題を把握し「何をもとめているのか?」を知るスキルが必要です。▼顧客理解の詳細はこちら顧客理解を深める分析手法5選|重要性と活用方法を徹底解説します商品やサービスの価値をつくるスキル 次に、顧客のニーズを理解した上で、そのニーズを満たす商品やサービスをつくり出すスキルが必要です。 マーケティング担当者は、顧客ニーズを満たすために、製品開発やサービスの設計に加わり、顧客にとって本当に価値のあるものを提供するために働きかけます。言語化スキル ここでいう言語化スキルとは、前述の「顧客のニーズ」や「商品やサービスの価値」を分かりやすく定義し、商品、サービスの特徴や差別化のポイント、とるべき戦略戦術を言語化して資料にまとめる能力です。 この資料は、顧客とコミュニケーションを行うときの基本的な方針となります。また、一貫したマーケティング活動を効率的に行うために、上記の資料は経営層や営業部門、カスタマーサクセスなどの関係部署に共有し浸透させる必要があります。価値を浸透させるスキル 最後に、言語化した戦略戦術をもとに商品やサービスの価値を顧客に浸透させる能力が求められます。 適切な顧客ターゲットに対して、適切なタイミングで、適切な媒体を選び、コミュニケーションを実施します。マーケティング担当者の業務フロー マーケティングの業務は、一般的に以下に説明するステップで実施されます。 自分の担当業務がどのフローに該当するのかを理解し、そのフローで必要とされるスキルを習得しましょう。市場調査 商品やサービスを提供する市場や顧客ニーズを深く理解するために市場調査を実施し、調査内容を資料としてまとめます。マーケティング戦略策定 市場調査で得られたデータをもとに、マーケティング戦略を策定します。 商品やサービスの特徴、他社との差別化要因を整理し、誰に、どのような価値を、どのような方法で浸透させるのか言語化します。コミュニケーション(マーケティング戦術)の実施 策定した戦略をもとに、広告、SNS、SEO(検索エンジン最適化)などのさまざまなマーケティング施策を実施して、顧客へ商品やサービスの価値を浸透させます。分析・レポート 実施した施策を分析し、その効果を評価します。 次回のマーケティング活動に活かすための改善点を見つけ、PDCAサイクルを回してマーケティング活動の質を向上させます。市場調査のポイント 市場調査では、市場規模や社会情勢、政治要因、顧客のニーズ、競合他社の動向などを調査します。調査事項調査の意図市場規模売上規模や成長の見込みを知る社会情勢戦争、疾病、AI、少子高齢化、Z世代、ダイバーシティなど、とりまく社会の変化が市場に与える影響を知る政治要因法改正や規制、政権、金融政策、政治的な動きによる市場に与える影響を知る顧客のニーズ顧客が求めていることを知る 公開されている資料を参照する 政府や公的機関が発行する白書やリサーチ会社が提供するデータを参照します。図書館やWebで無料で閲覧可能な資料の他に購入が必要な資料もあります。 これらの情報は、各省庁や各企業ごとに発行されており内容もさまざまです。ネット検索を活用して目的にあった資料を探す必要があります。 例えば、内閣府のページでは、さまざまな白書が公開されています。リサーチ会社に委託する リサーチ会社に調査を委託します。一般には公開されていない独自の情報を収集できます。自社で独自調査を行う 自社のリソースでアンケート調査やユーザーインタビューを行い独自の情報を収集します。 自社の顧客や周囲の関係者に対して調査する方法の他に、アンケートプラットフォームやスポットコンサルティングを活用した公募調査も情報収集に効果的です。マーケティング戦略策定のポイント マーケティング戦略の策定とは、他社との差別化や商品・サービスの提供価値、販売ターゲットを明確にし、具体的なマーケティング施策を立案する業務です。 以下では、代表的なフレームワークを含めて紹介します。STP(ポジショニング)分析 STPは「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の頭文字を取ったものです。 自社が市場でどのポジションをとり、競合他社と差別化していくのかを言語化するフレームワークです。 ▼STP分析の詳細はこちら STP分析とは?3つの事例を交えてやり方を徹底解説4P(マーケティングミックス)分析 自社でコントロールできる「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(プロモーション)」の4つの要素の方針を言語化するフレームワークです。 ▼4P分析の詳細はこちら 4P(マーケティングミックス)とは?4Cとの違いや手順、具体例をわかりやすく解説誰に(WHO)を定義 販売する対象の顧客像を定義し言語化します。マーケティング業界では「ペルソナを設定する」ともいわれます。 ここで定義する項目は、販売対象が消費者(BtoC)の場合か企業の場合(BtoB)かによって異なります。 また、商材やサービスの特徴によっても設定するべき項目が変わります。 BtoCの例では、年齢や性別、職業、年収、家族、ライフスタイル、抱えている課題などの項目を定義して顧客像を描きます。 BtoBの例では、従業員人数、年商、業界、部署、役職、抱えている課題などの項目を定義して顧客像を描きます。 ▼ペルソナ設定の詳細はこちら マーケティングにペルソナを活用する効果とは?よく聞く3大疑問にズバッと回答何を(WHAT)を定義 定義したペルソナ(WHO)のどのような課題を解決するのか?商品やサービスの価値を具体的に言語化します。どのように(HOW)を定義 商品やサービスの価値(WHAT)をどのように伝えるのかコミュニケーション施策を策定します。コミュニケーション(マーケティング戦術)実施のポイント 具体的なマーケティング戦術を実施する前におさえておくべきポイントを以下2つの観点から解説します。マーケティングファネルに基づくカスタマージャーニーの作成 マーケティングファネルとは、顧客が商品やサービスに対してどのように認知し、興味を持ち、購入に至るかのプロセスを図示したものです。 カスタマージャーニーとは、上記ファネルの各フェーズでの顧客の感情や思考を言語化し、企業がとるべきコミュニケーション施策を可視化した表です。 この資料を作成することで、各ファネルの顧客に対して、とるべきマーケティング戦術を整理し定義できます。 ▼ペルソナとカスタマージャーニーの例 例えば、「無関心」フェーズの顧客に自社商品を知ってもらいたい場合は、多くの人に拡散されて広まるSNS上でのキャンペーンなどが効果的です。 一方、「比較検討」フェーズの顧客には、自分に合ったおすすめ商品がわかる診断コンテンツなどが効果的です。 このように、フェーズに応じてとるべきマーケティング戦術は違ってきます。 SNSキャンペーンや診断コンテンツについては、下記の記事で解説しています。 >>【2024年最新】SNSキャンペーン成功事例18選!手法や実施する4つのコツを解説 >>プロが解説!業界別の診断コンテンツ人気事例24選、目的、形式など総まとめ ▼カスタマージャーニーマップの作成に関しての詳細はこちら カスタマージャーニーマップとは?陥りやすい3つの失敗と正しい作成手順をご紹介 |予算配分とKGI・KPI設計 カスタマージャーニーで定めた施策に予算や人的リソースをどのように配分するか決定します。 まず「何のための施策なのか?」目標を言語化します。例えば「商品の認知」、「購買の獲得」、「エンゲージメントを高める」など、施策にブレが生まれないように明確化します。 次に目標に即した、評価する数値目標のKGIとKPIを設定し、達成状況を管理します。 ▼KGI・KPIの設定方法の詳細はこちら マーケティングにおけるKGI・KPI設定のポイントとは分析・レポートのポイント マーケティング活動を効果的に進めるためには、施策の評価と改善が欠かせません。 ここでは、分析・レポートのポイントを解説します。施策ルートごとに評価する 実施した施策ごとに、顧客の接触から受注・購買までKPIの評価を行い、パフォーマンスの悪い施策は改善や休止の判断をしていきます。 代表的な評価指標は以下です。CV数 CV数(コンバージョン数)とは、購入や登録など目標のアクションを顧客が実行した回数になります。ECなどの場合は購入された商品の数になります。CVR CVR(コンバージョン率)とは、CV数を施策への接触数で割った割合です。施策がどれだけ効果的にコンバージョンを促しているかを示します。 例えば、100人に商品が閲覧され、そのうちの3人が購入した場合、CVRは3%になります。 ▼CVRについての詳細はこちら CVR(コンバージョン率)とは?計算方法や改善のコツを詳しく解説CPA CPA(顧客獲得単価)とは、1件のCVを得るためにかかった費用です。CPAが低いほど、効率的に顧客を獲得できていることを示します。 例えば、100万円の広告費をつかい、50個の商品が売れた場合は、CPAは2万円になります。ROAS ROAS(広告費用対効果)とは、広告費に対する売上の割合です。ROASが高いほど、効率的な施策になります。 売上150万円をあげるのに、広告費を100万円使った場合はROASは150%です。ボトルネックを探し改善する 施策の評価結果から、ボトルネック(目標までの道のりを妨げる要因)を見つけ出し、改善策を講じていきます。 例えば、CVRが低く目標のCV数に達していない場合、以下をチェックしてCVRを改善していきます。 露出先がターゲットとマッチしていない可能性 広告文が製品や遷移先のLP(ランディングページ)とマッチしていない可能性 LPの訴求内容に問題がある可能性 LPのUIやUXに問題がある可能性 マーケティングの勉強方法 マーケティング業務は、広範囲にわたる知識とスキルが求められる分野です。 統計学や顧客管理、MA(マーケティングオートメーション)、SEO、SNS、広告や各種ツールの活用など多岐にわたり覚えることが多い業務といえます。 一方で、教材は豊富です。Webサイト記事からYoutube、書籍まで充実しており、検索すれば大概の情報にアクセス可能で、これらを活用することで効率的に学べます。 ここでは、初心者がWebマーケティングを学ぶための方法を解説します。知識の習得 最初は体系的にまとめられているWebマーケティングの書籍、教材で全体の流れをつかむことをおすすめします。概略を把握したあとに、自身の担当業務の細かな知識をWeb検索で補完していくと効率が良いでしょう。 ただし、掲載されている内容が100%正しいとは限らないので複数ソースの確認をおすすめします。Webマーケティング関連の書籍 書籍のよいところは、体系的に順を追って学べるところです。最初の教材として最適といえます。さらに深堀したい場合は、特定の分野に特化した専門書籍も多数出版されています。WebサイトやYouTube WebサイトやYouTubeにはマーケティングに関する多くの無料情報があります。 検索を活用すれば、必要な情報を無料で得られます。MBAの受講やE-learningの受講 コストはかかりますが、E-learningやMBAプログラムのコースを受講し、より専門的な知識を学ぶ方法もあります。業界のWebサイト、X(旧Twitter)などから最新トレンドを学ぶ マーケティング手法は常に変化しています。ニュースサイトやSNS(Xなど)をフォローして、最新のトレンドやニュースをキャッチアップすることも重要です。現場を学ぶ 基礎知識を学んだ上で、実際の現場で経験を積むことが次のステップです。実践的な知識を得る方法を例示します。ワークショップやコミュニティに参加する マーケティング関連のワークショップやセミナー、コミュニティに参加することで、現場での実践的な知識やネットワーキングの機会が得られます。副業など通じて実践的な経験を積む 副業でプロジェクトに参加することで、実際のマーケティング業務を経験できます。自分でサイトを立ち上げて実践してみる 自分自身でWebサイトを立ち上げ、実際に商品販売やSEO、リスティング広告、データ分析を行うことで施策の経験を積めます。まとめ マーケティングは、コミュニケーションを通じて価値を知ってもらい、顧客が自発的に商品やサービスを利用するようになることが理想です。 そのためにマーケティング担当者は、市場や顧客を理解したうえで価値あるサービスを創造し、適切なコミュニケーション施策を実行する必要があります。 また、実施した施策を評価分析、改善を続け、さらなる価値の創造につなげていくことが求められます。