診断コンテンツの作成方法から活用方法まで、診断のすべてがわかるメディア
顧客インサイトとは?理解するための方法と成功事例から考える必要性
顧客インサイトとは顧客ですら自覚していない意識や欲求のことで、あらゆるマーケティング施策に通じる概念です。施策の精度を高め、顧客に響くキャッチコピーを作成できるようになる顧客インサイトについて、本記事では成功事例とともにご紹介します。
更新日:2024/10/25 公開日:2021/12/07
「工夫を凝らして施策を考えているのに成果が出ない…」
という悩みは、ほぼすべてのマーケターが抱えていらっしゃるかと思います。
こうした悩みに対してよく用いられるのが「フレームワーク」「理論」「解析ツールの数字」などのテクニカルな要素です。
ただ、これらのテクニカルな要素は決して万能ではなく、あくまで一つの手段に過ぎません。根底で「顧客が本当に求めているもの」を理解していなければ、目的と手段が逆転してしまったり、用いられる手段自体に誤りがあることを見落としてしまい、顧客が求めているものから離れてしまったりすることがあります。
この顧客が本当に求めているものを見失わないよう、マーケターの皆さまに知っておいて欲しい概念が、今回ご紹介する「顧客インサイト」です。
インサイトとは直訳すると「洞察」「直感」「発見」のことであり、顧客インサイトとは「顧客に対する深い洞察や直感」という意味合いで受け取ることができます。より具体的には「顧客ですら自覚していない意識や欲求」のこととも言えるでしょう。
この顧客インサイトを理解することで、精度の高いマーケティング施策を立案したり、顧客に響くセールスコピーやキャッチコピーを選べたりできるようになります。
本記事では、そんな「顧客インサイト」について、成功事例の紹介から意識して行ってほしいことまでご紹介しますので、日々のマーケティング業務の参考にしてみてください。
※当コンテンツは、Webマーケティング支援の専門家であるピクルスが提供しています。
目次
顧客インサイトを理解するための事例集
まずは顧客インサイトがどのようなものかを皆さまにご理解していただくため、代表的な成功事例をいくつかご紹介していきます。
ここで紹介するのは有名企業や著名なマーケターの事例ですが、そのままマネする必要はありません。大切なのは顧客インサイトを理解するために必要な「考え方」を押さえることですので、ぜひ気軽にお読みください!
事例1.マクドナルドのヘルシー志向とは真逆の顧客インサイト
これは非常に有名な事例でご存じの方が多いかもしれませんが、マクドナルドがアンケート調査で消費者に「どんな商品が欲しいですか?」と聞いてみたときの事例です。
アンケート結果で「低カロリー」「ヘルシー」「オーガニック」という要望が多かったため2006年に「サラダマック」を販売したものの売上がさほど伸びず、後に販売した「メガマック」や「クォーターパウンダー」などの肉山盛りの新メニューが大ヒットしました。
これが意味するところは「顧客が言っていること(=表面的なニーズ)と実際の消費行動(=顧客インサイト)はまったく違った」ということです。顧客の表面的なニーズは「ヘルシー志向」で実際にそう答えた消費者も多かったのですが、実際に結果として出た売上から見えてくるニーズは「もっと肉が食べたい(体に悪いものでも食べたい)!」だったわけです。
事例2.iPhoneの登場 ~ガラケーからスマホへ~
これもよく出される例ですが、iPhoneの登場により「ガラケーからスマホへ移行」した事例もご紹介しておきます。
ガラケーが普及した後、多くのケータイ製造メーカーが行っていた企業努力と言えば「通信が繋がりやすい」「通信速度が速い」「音が良い」など、言ってしまえば「今あるものの品質改良」でした。
消費者の中には、「目新しさ」を求め、ケータイを買い替えても「さほど前と違いがわからない」という印象を抱いていた方もいるはずです。実際に、ケータイを買い替える理由も「旧機種よりスペックが良くなったから」ではなく「契約期間更新のタイミングだったから」「今使ってるのが壊れたから」などの消極的理由であることもあったでしょう。
しかし、そんな状況の中2007年にAppleからiPhoneが発売され、徐々にガラケーからスマホへの移行が進み、今やスマートフォンは生活必需品といっても過言ではない普及率を誇っています。iPhone登場後のスマートフォン普及により、それまで「ただの連絡手段でしかなかったガラケー」が一転して、生活・ビジネスをサポートする様々なアプリが搭載された便利ツールとして広まっていきます。俗に「イノベーション」と呼ばれる、マーケティングの大成功例と言えるでしょう。
このイノベーションに関して、Apple創業者のスティーブ・ジョブズは「電話機をもう一度再発明する」と語っており、ここに隠された顧客インサイトは「今までのガラケーとはまったく違ったイノベーションを求めていた」と考えられます。
事例3.AKB48の登場 ~地下アイドルの一般化~
最後にアイドル産業やエンタメ産業の流れを変えたといっても過言ではない「AKB48」の事例についてご紹介していきます。
AKB48はプロデューサーである秋元康氏が「会いに行けるアイドル」というコンセプトを掲げ、マスメディア進出前は秋葉原のドンキホーテにてライブを行い握手会なども開催していました。
今や広く知れ渡ったこのAKB48のビジネスモデルですが、当時のオタク文化として「メイド喫茶」「地下アイドル」など、既に「従来のマスメディア的な神聖化されたアイドルではなく、より身近に感じられる会いに行けるアイドル」という顧客インサイトが存在していました。
この顧客インサイトは、後のAKB48から派生したグループ「乃木坂46」「けやき坂(現:日向坂46)」などにも引き継がれ、別のアイドルグループでも似たようなビジネスモデルが増え続けています。
最近では「ライバー」と呼ばれる配信アプリで人気を獲得し動員数を稼ぐアイドル・インフルエンサーや、「VTuber」と呼ばれるキャラクターイラストや3Dポリゴンを活用した二次元アイドルが台頭しており、アイドルに求められる顧客インサイトも変化しつつあります。
このように、「従来的なビジネスモデルの裏に潜むニーズ」を拾って、「今まで王道だったものとは違ったマーケティング戦略で成果を出す」ためには、顧客インサイトの理解が必要になってくるとお分かりいただけるかと思います。
顧客インサイトを理解するための「ニーズ/ウォンツ/インサイト」の違い
次にご紹介したいのが「ニーズ(Needs)/ウォンツ(Wants)/インサイト(Insight)」の違いです。
これらの概念は、広義で言えば「ニーズ」でひとくくりにされることが多く、マーケティング現場でも使い分けていないケースが大半でしょう。
ですが、顧客のニーズは千差万別であるため「ニーズ」の一言で終わらせてしまっては、真の顧客理解ができているとは言えません。
ですので、「ニーズ(Needs)/ウォンツ(Wants)/インサイト(Insight)」の違いを整理し、顧客インサイトがどのようなものかを再確認しておきましょう。
▼ニーズ/ウォンツ/インサイトの違い(顧客目線)
ニーズ(Needs)とは本人が明確に認識できている欲求のことで、顧客は必要性を感じている状態です。たとえば「今すぐ水が飲みたい!」と思っていて「近所の自動販売機で〇〇(商品名)の水を買いたい!」と目的や欲しい物が具体的かつ明確であるという特徴があります。
一方で、ウォンツ(Wants)は「水が飲めるといいな…」という曖昧で漠然とした欲求です。「できるだけ安い水が飲みたい」「味のついた水が飲みたい」などのプラスアルファを求めていることも多く、顧客心理としては「より良いものや安いものを選びたい」と思っている可能性が高いです。
よくマーケティングやセールスの話で例えに出る「顧客が欲しいのはドリルではなく穴である」というベネフィットの話も、このウォンツ(Wants)に含むと考えられます。
インサイト(Insight)は「水が飲めるといいな…」という漠然とした欲求に加えて「だけど、水を買いに行くのが面倒」「水を飲むのであればついでに健康も意識したい」などの隠れた欲求を見つけ出す必要があります。
「ニーズ/ウォンツ/インサイト」は紹介している書籍や用いられる文脈上で厳密な定義が異なることも多いですが、「顧客自身が認識している欲求が具体的かつ顕在的なほどニーズ寄り、認識している欲求が抽象的かつ潜在的になるほどインサイト寄り」と捉えてみるとわかりやすくなるはずです。
なお「顕在ニーズ/潜在ニーズ」という観点については、ピクルスで紹介している「ジョブ理論」の記事でもご紹介しておりますので、ぜひお読みください。
顧客インサイトを習得・活用するために
ここまでは「顧客インサイトとはどのようなものであり、どのような効果を期待できるか?」についてご紹介してきましたが、「じゃあ具体的に何をすればいいの?」と疑問に思われている方が多いかもしれません。
顧客インサイトは一朝一夕で把握できるものではないため、長い時間をかけて意識的に取り組んでいく必要があります。
さらに、顧客インサイトへの理解はできている実感が得にくく、また理解しているだけでは必ずしも成果に結びつかないため、不安に感じることが今後出てくるかもしれません。
ですが、これから紹介することを意識して日々行っていけば、きっと顧客インサイトを掴めるようになりますので、ぜひトライしてみてください。
消費者として体験することを怠らない
「マーケター自身が消費者として様々な体験を得ることを怠らない」ことが、顧客インサイトを理解するための第一歩です。
マーケター自身が消費者としての体験をしていなければ、カスタマージャーニーマップなどの消費者行動を策定するフレームワークを使いこなしていくことはできません。
カスタマージャーニーマップについては、こちらの記事で解説しています。
また、自社のサービスはもちろん、競合他社のサービスを使ってみることで新しい発見につながることもあります。
例えば、使い勝手などは商品・サービスのスペックを眺めるだけでは分かりません。スペックだけで比較するのではなく実際に体験することで、自社商品の良い面・悪い面がさらに浮き彫りになってくるでしょう。
商品・サービスによっては、消費者として容易に体験できないものもあるため、「消費者からの声を聞く」という二次情報の活用も有効です。
手軽な方法としては、インターネットコミュニティやSNSでユーザーの声を拾い集めてみたり、知り合いから消費に関する話を聞いてみたりするのがいいかもしれません。最近では音声SNSや配信アプリも登場しているため、こういった場所でも消費者目線の話が拾えます。
もし予算をかけられるのであれば、専門会社へユーザーインタビュー調査を依頼するのもおすすめです。もし少額の予算しかない場合は、クラウドソーシングでもアンケート調査やユーザーインタビューが行えるので検討してみてください。
こうした「自身が消費者として購買行動を行う」「消費者と接点を持つ」という方法を普段から意識的に実践することで、「消費者目線」を養うことができ、それが顧客インサイトに近づくための足がかりになっていきます。
統計情報で裏取りを行う
上述の「自身も消費者として体験を得る、または消費者から生の声を聞く」という方法には弱点があります。
それは、一個人の体験や感想を重視するあまり、全体像を見失ってしまい、ごく一部の狭い層の意見や体験に流されてしまうというリスクです。
その際、自分の感覚が間違っていないかの裏付けとなるのが、アンケート調査を活用するという方法です。
たとえば、ある消費者から「この商品はこういう部分が良い」と感想を聞いたとします。その後、アンケート調査で「同様の感想を述べている人」「そうでない不満のある人」の比率を比べてみれば、その消費者の感想が少数派か多数派かは数字で裏取りできるはずです。
この「多数の人の意見や行動記録を元に、数字を比較してインサイトを特定していく」という考え方は、よりマーケターがスキルアップしていくために必要な「統計思考」の入口だとも言えます。
「統計思考 (Statistical thinking) 」とは、データに基づいて合理的な判断をすることで、統計的思考や統計思考法とも呼ばれています。マーケターにとっては、アンケート調査での数字集計データを分析したり、不特定多数のユーザー行動を記録した解析ツールを活用する際に役に立つ思考法です。
有名な解析ツールである「GoogleAnalytics」はユーザーの行動記録を統計情報として収集しているツールでもあり、その目的はトップ画面からもわかる通り「インサイト」を見つけてマーケティング施策に活かすことです。こういった解析ツールをより有効活用するのであれば「統計思考」を身につけておくと、より高度な使い方ができるようになります。
最新バージョン(GA4)では「イベント(≒ユーザー行動)に焦点を当てる」という設計思想になっており、ますます「データによるインサイトの裏取り」が重視されていく時代になっていくはずでしょう。
診断コンテンツを利用する
ユーザーが質問に答えることで、回答に応じた結果を表示する「診断コンテンツ」は、インサイト発見に役立ちます。
直接「あなたが欲しいものは何ですか?」とユーザーに聞いても、隠れた欲求であるインサイトをつかむことはできません。
しかし、診断コンテンツは質問を重ねて分析することで、本人でも自覚できていなかったインサイトを露わにすることができます。
例えばピクルス制作の「マーケティング課題診断」では、回答に応じて下記のような分析結果を表示。
自分の回答に基づいて課題が整理されるため、客観的に状況を把握し、見落としていたインサイトにも気づくことができます。
こういった診断を商談前にお客様にやっていただければ、事前に課題を掘り下げた上で、インサイトを満たす最適な提案を行い、成約率を上げられます。
また、多くの人に診断を利用してもらい、データを蓄積して統計を取れば、インサイトの妥当性はさらに高まります。
新しい商品やサービスの開発、セールスコピーの考案などにも活かせるでしょう。
ピクルスの診断作成ツール「ヨミトル」なら、データの分析やレポートも簡単にできるのでおすすめです。
魅力的なコピーを作るポイントは下記でご紹介しています。
顧客インサイトを活用する際の注意点
思わぬ需要を拾って大ヒット商品やイノベーションを生み出せるかもしれない顧客インサイトにも、様々な注意点が存在します。
まず前提として、顧客インサイトへの理解を軸にした商品は開発段階からマーケティング戦略を練る必要があります。そのため、商品開発部門が別にある場合には、自分だけが顧客インサイトを発見しても活かすことは難しいでしょう。
しっかりと顧客インサイトを周囲に理解してもらえるように働きかけることも重要です。
ここからは、実務上で予想される以下の3つの注意点についてご紹介します。
見つけたインサイトの理解を周囲から得るのに時間がかかる
まず、現実的に予想される障害としては「インサイトを発見しても周りからの理解が得られない」という点でしょう。
顧客インサイトを発見して他者に情報共有したとしても「そんなことはない」「自分は違う」「エビデンスは?」などの反論を受け、突っぱねられることは珍しくありません。
前述したアンケート調査や解析ツールによる裏どりやユーザーインタビューへの同席依頼などを通じて、少しずつ理解してもらえるように働きかけていきましょう。
自身の顧客インサイトに対する理解度が確認しにくい
先ほども少し触れましたが、顧客インサイトに対する理解度は可視化するのが難しいです。しかし、そもそも顧客インサイトはここまで理解すればOKという基準があるものではありません。
実際、どれだけ顧客インサイトを理解してマーケティング実務に落とし込めたとしても、百発百中にならないことは想像がつきますよね。
たとえば、先ほどご紹介した事例でいえば、マーケティングの才能があったと言えるスティーブ・ジョブズ氏や秋元康氏も鳴かず飛ばずの施策を何度も経験し、試行錯誤を重ねた上で大ヒットにたどり着いたはずです。
もし自社のマーケティング施策だけでは顧客インサイトが掴めない場合には、自身のSNS運用の中でPDCAを回す経験をしてみたり、定期的に顧客インサイトに関するフレームワークを埋めてみて理解度がどれほどか可視化したりするのがいいでしょう。
個人のTwitter運用で得られる知見はこちらの記事でご紹介しています。
使い方を誤ると企業イメージを悪くしかねない
最後に、顧客インサイトを活用する上であまり認知されていないリスクとして「潜在意識に訴えかけすぎると、見る人に不快感を与えて企業イメージを悪くしかねない」という話をご紹介しておきます。
たとえばですが、冒頭でご紹介したマクドナルドの「顧客が欲しかったのはヘルシーさではなく肉山盛りバーガーだった」というインサイトに気づいて、「身体に悪くても肉が食べたい!極悪カロリーバーガー!」と肥満体型の人が肉山盛りのバーガーを食べているようなド直球すぎる広告を出せば、おそらく世間的な風当たりが強くなり炎上してしまうかもしれません。
その理由としては「自社商品が身体に悪いリスクがあることを自覚している企業がマーケティング戦略に露骨に自社のリスクを訴求してきたことに対する不快感」「まるで『もっとマクドナルドを食べて太れ!』と煽られているようで生理的な嫌悪感を感じた」など、負の消費者感情が増長されてしまうことがあると考えられます。
その結果、「身体に悪いとわかっていても、カロリーを気にしないでマクドナルドで思いっ切り肉山盛りバーガーが食べたい!」というインサイトを秘めていた消費者が冷めてしまい、機会損失になってしまうかもしれません。
つまり、顧客が秘めているインサイトをド直球に指摘してしまうようなアプローチではなく、やんわりとしたアプローチで顧客に気づいてもらう、あるいは顧客自体がインサイトに気づかずに消費行動に結びつくという形が理想だということです。
最後に|顧客インサイトへ迫る姿勢はマーケターに持ち続けてほしい
長くなってしまいましたが、この記事を通して「顧客インサイトがどのようなものか」「顧客インサイトを理解していくことでどうなれるか」について、なんとなくイメージが掴めてきたのではないでしょうか?
文中で何度もご紹介しています通り、顧客インサイトは一朝一夕で理解できるものではなく、また裏取りや検証も非常に大変です。
しかし、顧客を理解していくための行動を一つずつ積み重ねてけば、きっと実務に活かせるようになるはずです。
ピクルスも「共に進めるバディ」という理念のもと、マーケティング支援を一緒に進めることで顧客理解を深めながら、成果の最大化に貢献できるよう取り組んでいます。
ぜひ今回の記事を参考に顧客インサイトを捉え、マーケティング施策の成果をさらに高めていきましょう。
想定される活用シーン
ライター:新田 拓也
デジタルマーケティングコンサルタント
来歴:小売販売→SEO集客/WEB解析→DX/デジタルマーケティングコンサルティング ※記事内容は株式会社ピクルスによる校正・編集が行われており、著者の見解と異なることがあります。 著者情報およびマーケティング見解については https://takuya-nitta.com/ をご覧ください。