企業活動におけるインターネット利用の重要性が増すにつれ、各種マーケティングデータの活用が課題となっています。特にネット上で商品やサービスを販売している企業にとっては、消費者が購入に至るまでのプロセスを分析し、各フェーズで適切な施策を講じることが重要です。一方、マス広告が主流であった時代からインターネット検索、ソーシャル共有と消費者の行動は時代とともに変化しています。そこで今回は消費者行動のフレームワークとも言える「購買行動」について、代表的なモデルを紹介するとともに運用のポイントについて解説します。▼関連記事Webプロモーション、認知拡大には診断コンテンツを!業界別の事例集購買行動モデルについて消費者が商品やサービスの購入に至るまでの過程は「購買行動モデル」としてパターン化されています。ここでは購買行動モデルについての説明およびインターネットの普及と活用の高度化に伴う変化、そして購買行動モデルをマーケティングに活用するメリットについてご紹介します。購買行動モデルとは購買行動モデルとは消費者が商品やサービスを認知してから購買に至るまでのプロセスをモデル化したものです。自社の商品・サービスを消費者に認知させる手段としてTVCMや新聞・雑誌広告が主流だった時代と、SNSを通じた情報収集が一般化している現在では消費者行動に大きな違いがあるように、時代とともに購買行動モデルも変化しています。また企業が展開するビジネスの分野や商品・サービスの特徴によっても異なるため、購買行動モデルは企業ごとにさまざまであると言えるでしょう。さらに最近では購買をゴールとせず、「共有」や「推奨」「拡散」といった消費者の情報発信や「感動」「満足」といった消費者の感情変化まで含める動きも出てきており、購買行動モデルは多岐に渡っています。3つの時代変遷先述の通り、消費者の購買行動モデルは時代とともに変化してきました。インターネットが一般化するまで、人々が受信する情報は企業によるTVCMや新聞・雑誌などのマス広告が主流であり、消費者が自ら情報を探すという行動はあまり見られませんでした。 しかしインターネットの普及に伴い、消費者が能動的に情報を検索できるようになったことで新たな購買行動モデルが誕生します。その後、ソーシャルメディアの活用が進むにつれ、人々の共有する情報が消費者行動に影響を及ぼすようになり、さらに新たな購買行動モデルが定義されるようになりました。 そして現在、さまざまな情報が溢れるインターネットから消費者が情報を比較し選別するコンテンツ発見の時代になったと言われています。マーケティングに活用するメリット購買行動モデルをマーケティングに活用するメリットは、認知から購買に至るまでのプロセスを分解し各段階ごとに適切な施策を実行することができるようになる点にあります。 各プロセスに応じて消費者に対し適切にアプローチするためのマーケティング施策を立案・実行できるため、購買行動へと結びつけやすくなるのです。また、消費者がどのプロセスで離脱し購買に至らなかったのかを分析することによって、自社のマーケティング上の問題点を明確にし、改善につなげていくことが可能となります。 購買行動モデルは企業にとって消費者とのコミュニケーションを最適化するための重要な指標と言えるでしょう。代表的な購買行動モデル購買行動モデルは数多く提唱されていますが、ここではマス広告が主流だった時期のモデル、インターネット検索により登場したモデル、そしてソーシャルメディアによる共有で生まれた新たなモデルを中心に、さまざまなバリエーションをご紹介します。AIDMA(アイドマ)AIDMAはTVCMに代表されるマスマーケティングが主流だった20世紀まで標準として利用されてきた代表的な購買行動モデルです。商品・サービスについて認知し、興味を持って欲しいと考えるようになり、想起することによって最終的に購買に至るという購買行動の流れを示しています。消費者が購買を決定するまでの心理的なプロセスの推移から構成された、汎用性の高い購買行動モデルです。A-ttention(認知)I-nterest(関心)D-esire(欲求)M-emory(想起)A-ction(行動)AISAS(アイサス)AISASはインターネットの登場により消費者の行動が能動的になったことを受け、「検索」「共有」という行動を加えた新時代の購買行動モデルです。商品・サービスを認知した消費者が、関心を持って検索を行い、購買した後も共有という形で行動するという流れを示しています。インターネット時代に合致した新しい購買行動モデルのデファクトスタンダードと位置付けることができます。A-ttention(認知)I-nterest(関心)S-earch(検索)A-ction(行動)S-hare(共有)SIPS(シップス)検索という能動的な行動が一般化した後、さらにソーシャルメディアの普及に伴って変化した購買行動モデルがSIPSです。購買行動の起点が広告による商品認知ではなくソーシャルメディアによる共感となっており、いわゆる口コミによる認知から情報の確認、「いいね」に代表される参加プロセスを経て自ら拡散するという流れを示しています。SIPSは消費者の購買というプロセスの有無に関わらず、共感が及ぼす影響力に焦点を当てている点が特徴です。S-ympathize(共感)I-dentify(確認)P-articipate(参加)S-pread(拡散)AISCEAS(アイシーズ・アイセアス)AISCEASはAISASに「検索」と「比較」のプロセスを追加した購買行動モデルです。インターネット上の消費者行動を示しており、特にクチコミサイトやレビューサイト、そして比較サイトなどの普及に対応しているのが特徴です。A-ttention(認知)I-nterest(関心)S-earch(検索)C-omparison(比較)E-xamination(検討)A-ction(行動)S-hare(共有)AIDCA(アイドカ)AIDCAはダイレクトマーケティングで用いられる購買行動モデルです。AIDMAの「Memory(想起)」の代わりに「Conviction(確信)」となっている点が特徴で、消費者が商品やサービスにより強い確信を抱いた上で購買に至る形を示しています。信頼性の高い専門家の評価が購買に大きな影響を与える商品・サービスの場合に利用されるケースが多いモデルです。A-ttention(認知)I-nterest(関心)D-esire(欲求)C-onviction(確信)A-ction(行動)AMTUL(アムツール)AMTULはリピート購入を念頭に顧客ロイヤリティの概念を加えた購買行動モデルです。商品やサービスを認知し記憶してから試しに使ってみて、本格的な利用を開始し固定客となりリピート購入を継続するというパターンを示しています。なお「忠誠」は「愛用」と言い換えることもできます。A-ware(認知)M-emory(記憶)T-rial(試用)U-sage(利用)L-oyalty(忠誠)VISAS(ヴィサス)VISASはクチコミによる商品・サービスの認知から購買に至る消費者の行動を定義したモデルです。クチコミで認知した消費者は影響を受け、共感して商品・サービスの購入に至った後、自らが新たなクチコミの発信者となる流れを示しています。V-iral(クチコミ)I-nfluence(影響)S-ympathy(共感)A-ction(行動)S-hare(共有)DECAX(デキャックス)DECAXはマス広告やソーシャルメディアからの情報ではなく、消費者自身が起点となって購買に至るまでのプロセスを示す新しい購買行動モデルです。消費者が自らの課題や欲求を満たす商品・サービスを能動的に「発見」し、いいねなどを通じ企業と好意的な「関係」を構築、商品・サービスの有益性を「確認」した上で購買に至り「体験を共有」するまでのプロセスを示しています。D-iscovery(発見)E-ngage(関係)C-heck(確認)A-ction(行動)e-X-perience(体験共有)購買行動モデルの運用ポイント消費者の購買行動モデルを企業がマーケティングに活用するためには、どのような点に注意が必要なのでしょうか。 ここでは購買行動モデルを使いこなすための方法について説明します。指標設定購買行動モデルをマーケティングで活用するためには、まずどのモデルが自社の商品やサービスに最適なのか検討しましょう。 その上で重要となるポイントがKPI(Key Performance Indicator)、つまり指標の設定です。購買行動モデルの各プロセスにおけるアプローチは例えばAIDMAでは次の通りとなります。Attention(認知):WebやSNSの広告によって消費者認知を拡大する。Interest(関心) :ランディングページなどで商品・サービスについて関心を抱かせる。Desire(欲求) :商品ページやカタログで深い理解を促し、購買意欲を喚起する。Memory(想起) :メルマガやステップメールによって想起させ購買意欲を高める。Action(行動) :クーポンやキャンペーンで購買行動へと結びつける。これらの段階ごとに、などのKPIを設定します。 そして、その結果を分析し改善策の検討につなげていくのです。 広告からランディングページへのCTR(Click Through Rate)が低ければ広告クリエイティブや広告文に問題があるのかもしれません。 またメルマガを発行しても購入率が上がらない場合にはメルマガを発行するタイミングやコンテンツに改良の余地がある可能性があります。 各プロセスごとの指標設定と評価・分析、つまりPDCAを回す作業の繰り返しが、マーケティング上の成果につながっていくのです。 そして、適用する購買行動モデルは時代の変化に応じて見直しを継続していくことも重要です。コミュニケーションの最適化消費者に対するコミュニケーションの最適化を図ることも重要です。 コミュニケーションを最適化するためにはまず商品やサービスのユーザーとなるターゲットについて属性を定義した人物像であるペルソナを設定します。 ペルソナは年齢や性別、職業や収入、また居住地や趣味、ライフスタイルなど詳細な項目から構成する架空の人物像を指します。 ペルソナを設定するとターゲットとなる消費者について社内の認識を一致させることができ、消費者側の視点に立って考えるユーザーファーストが実現するというメリットが生まれるのです。 またペルソナによってアプローチやコミュニケーション手法の最適化を図ることは可能ですが、同時に情報発信タイミングの最適化についても考える必要があります。 購買行動モデルの各プロセスにおける適切なタイミングでの情報発信が、消費者に対して次のプロセスへの移行を促すからです。 20代の女性をターゲットとする商品・サービスの場合について、AIDMAを例に挙げてみましょう。 広告を通じて認知(Attention)し、関心(Interest)を抱いた対象のLP流入率を高めるために広告媒体としてふさわしいメディアの選定、そして誘導したLPで欲しいと思わせる(Desire)クリエイティブの制作にはペルソナの設定が欠かせません。 ターゲットとなる20代女性が未婚なのか既婚なのか、子どもはいるのかいないのか、都市に住んでいるのか地方在住者であるのか、生活水準は高いのか低いのかなどの要件により変わってくるためです。 また商品・サービスの購買につながる想起(Memory)を促すためのメルマガ配信や購買(Action)につなげるためのクーポンやキャンペーン施策の効果を高めるためには季節性なども考慮に入れた的確なタイミングであることが重要です。 このように、ペルソナの設定と適切なタイミング設定によりコミュニケーションの最適化を図ることが、購買行動モデルの効果的な運用に必要な要素であると言えるでしょう。予算配分企業の限られた予算をどのプロセスに重点投下するのか、という点も購買行動モデルの運用においては重要なポイントとなります。 購買行動直前の歩留まりが悪い場合には、商品・サービスの割引など購買意欲を刺激するための施策に費用を投下するといった配分も考えられますが、一般的には認知段階を強化するのが重要と言えます。 認知から購買に至る各プロセスで消費者は離脱していきますので、最初のプロセスである認知段階の母数を増やすことが購買に達する消費者数の増加に直結するためです。 予算を投下し認知のプロセスで大きな母数を確保した上で、各プロセスの最適化を通じ最終的に購買する消費者数を改善していくという形が購買行動モデル活用のポイントと言えます。まとめ今回は消費者の購買行動モデルについて概念と変遷、それにメリットや代表的なモデルについてご紹介しました。 購買行動モデルを運用するにあたってのポイントに留意した上で、自社のマーケティング強化につなげていきましょう。 ピクルスではブランドサイトや製品サイトの構築からランディングページ製作、そしてSNSキャンペーン支援まで、購買行動モデルの各プロセスを最適化するためのサービスをご提供しています。 自社のマーケティングを強化したい際には、お気軽にご連絡ください。 ▼関連記事 Webプロモーション、認知拡大には診断コンテンツを!業界別の事例集