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ジョブ理論を活用したマーケティングとは|顧客の本質的なニーズの掴み方

更新日:2024/10/25

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マーケティング施策を考える原点は「顧客」にあります。
そのため、多くの企業が「顧客が何を求めているか(ニーズ)」を考えたうえで、マーケティング施策を検討しています。

しかし、そのほとんどは表層的なニーズを分析するレベルで終わってしまい、本質的なニーズに辿りかないまま施策の内容検討に移ってしまいがちです。

最終的には考えたニーズを無視して、施策の目新しさやパッと見たときのインパクトの大きさばかりに着目し、「なんとなく効果がありそう」というマーケティング施策を実施してしまった経験があるのでないでしょうか?

成果の出せるマーケティング施策を実行するためには「顧客が本当に求めているものは何か?」をしっかりと掴む必要があります。

その本質的なニーズを探るために使えるのが「ジョブ理論」という考え方です。
今回はジョブ理論を用いたマーケティングについて具体的な事例を挙げつつ紹介します。

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ジョブ理論とは

ジョブ理論とはハーバードビジネススクールの教授をしていたクレイトン・クリステンセン氏が提唱した理論です。どんな理論かを簡単に一言で説明すると「人がプロダクト・サービスを購買する行動の背景を、論理的に説明したもの」です。

例えば衝動買いをするとき、全く欲しくないものを買うことはありませんよね?
ものを買う背景には「こうなりたい」という願望や不満といった欲求が必ず存在します。

ジョブ理論では、顧客が商材を購入し利用する背景にある以下の欲求を「ジョブ(仕事)」と定義しています。

・商材を用いることでなりたい姿
・商材を用いることで解消したい不満
・こなさなくてはいけない用事

これらのジョブを解決するために購買することを「ハイア(雇う)」としています。
すべての顧客(消費者)は何らかのジョブが生まれ、それを解消するために商品やサービスをハイア(購入)しているのです。

例えば「終電を逃した際にタクシーを利用して自宅に帰る」というケースでジョブを考えてみましょう。

このときの顧客のジョブとしては以下のようなことが考えられます。

「家に帰らないことで家族に怒られるのを避けたい(なりたい姿)」
「翌日の仕事に支障が出るから自宅に帰って休みたい(解消したい不満)」
「明日も仕事だが自宅に仕事道具があるので帰らなくてはいけない(こなすべき用事)」

これらのジョブを解消するためにタクシーを利用(ハイア)しているということです。

ジョブとニーズの違い

ジョブについて「ニーズと何が違うの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

そもそもニーズという言葉は直訳すると「欲求」です。
ニーズには「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」があるといわれていますが
顕在ニーズはすでに顧客が自覚しているものであり、潜在ニーズはまだ顧客自身も分かっていない欲求です。

この「潜在ニーズ」こそがジョブに近いものだと考えるといいでしょう。
もう少しニーズとジョブの違いを分かりやすく解説するために「洋服ブラシ」を例に挙げます。

顧客が洋服ブラシを買う顕在ニーズは「服を清潔に保ちたい」などでしょう。

先述したとおり、ジョブ(≒潜在ニーズ)は顕在ニーズの背景にあるものですので、服を清潔に保ちたいのは「周りから清潔だと思われたい」からかもしれません。これこそがジョブになります。

そしてこのジョブ(≒潜在ニーズ)が分かると、この人は洋服ブラシだけが欲しいわけではないことが見えてくるわけです。例えばその他の身だしなみグッズでも「周りから清潔だと思われたい」というジョブを解決することができるので、オススメすれば購入してくれる可能性が高いことが分かりますよね。

「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」

簡単にまとめると、「ジョブ」とは顕在ニーズよりもっと本質的な欲求(潜在ニーズ)であり、このジョブを把握することができればマーケティング施策の幅を広げ、効果を高めることができます。

ジョブを把握する具体的な方法として、診断コンテンツがあります。

診断をやってみて、「当たっている」「思ってもみなかった課題に気づく」といった経験はありませんか?

診断は顧客の回答に沿った結果を表示するものなので、自覚できていない課題=ジョブを顕在化させる効果があります。

この辺りの話については、下記の記事で解説しているので、気になる方は読んでみてください。

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ジョブ理論を「ミルクシェイクのストーリー」で解説

では次にジョブの重要性についてもう少し詳しく見ていきましょう。
そのためにクレイトン・クリステンセン氏が「ジョブ理論」を説明する際に例示した「ミルクシェイクのストーリ―」を紹介します。

クリステンセン氏はあるファストフード店から「ミルクシェイクの売り上げを伸ばしてほしい」と相談を受けました。
そのファストフード店はクリステンセン氏に頼む前からいくつかのコンサル会社やマーケティング代行会社に依頼をしていましたが、あらゆる施策が失敗に終わっていたそうです。

それまでは「店を利用する顧客に、味に関してアンケートを取ってフレーバーやトッピングを改良する」「顧客の性別や年齢などの情報をもとに属性を絞ったパッケージ、味にする」などの施策を打っていました。
しかしどの施策もまったく効果が出ず、クリステンセン氏に相談したという状況です。

平日の朝に訪れる顧客のジョブ

そこで彼はまず、ミルクシェイクがよく売れる平日の朝に店に行き、よく顧客を観察しました。
するとミルクシェイクを買っていく顧客の共通点として「一人でやってきて、ミルクシェイクだけをテイクアウトをして車に乗り込んでいく人」が多いことが分かったのです。

気になったクリステンセン氏は該当する顧客にインタビューしてみると、以下のようなコメントが多く出てきました。

「通勤途中であり、まだ車で長い距離を運転しなければいけない。
しかし一人で運転するのは退屈で仕方がない。
ミルクシェイクを買う前はバナナやドーナツを食べながら運転していたが、すぐに食べ終わってしまったり、手が砂糖まみれになってしまったりして困っていた。
その点、ミルクシェイクは手が汚れないし口寂しさを紛らわすのにピッタリだった。」

つまり顕在ニーズとしては「美味しいミルクシェイクでおなかを満たしたい」というものだったのですが、その背景には「通勤車内の退屈を解消したい」というジョブ(≒潜在ニーズ)があったのです。

クリステンセン氏はこのジョブを知って、フレーバーやトッピングは重要でなかったことに気づきます。
そして平日の朝の時間に限り通勤時に飲みやすいよう「ボリューム感があって長く楽しめるミルクシェイク」に改良しました。

休日の昼間に訪れる顧客のジョブ

またミルクシェイクがよく売れるもう1つの時間帯が休日の昼間でした。

クリステンセン氏はこの時間帯にも観察をします。
そして同じようにインタビューを続けると「親(主に父親)が子どものために購入しているケースが多いこと」が分かりました。

いつもは厳しくしつけているが、子どもの要求を断ってばかりなので休日くらいは優しいお父さんだと思われたくて子どもにミルクシェイクを買っているようです。

つまり平日の朝と同じく顕在ニーズとしては「美味しいミルクシェイクでおなかを満たしたい」でしたが、ジョブ(≒潜在ニーズ)は「子どもから好かれる親になりたい」だったのです。

クリステンセン氏は休日の昼間は子どもに飲ませやすいものとして、「ボリューム感は少なく、甘すぎず不健康に見えないミルクシェイク」を販売しました。

このように平日の朝と休日の昼間で顧客がミルクシェイクを買うジョブはまったく違います。平日の朝であればバナナやドーナツなどが代替品でしたが、休日の昼間はおもちゃやお菓子が競合なのです。

クリステンセン氏は顧客のジョブ(≒潜在ニーズ)にフォーカスして、商品を改良しました。するとこれまで伸び悩んでいたミルクシェイクの売り上げは見事に改善したのです。

ジョブ理論をマーケティングに生かす際の考え方

ミルクシェイクの例ではマーケティングの具体的な施策というよりも商品自体を改良するお話でしたが、広告やSNS投稿などの集客施策にもジョブ理論は活用することができます。

例えば、とある美容室が新規の来客数を増やすために、ディスプレイ広告で表示する画像や訴求文といったクリエイティブを作ることになったとしましょう。

まずはニーズを考えていきますが、
「技術力の高い美容師のもとで髪型を整えたい」「平日の仕事終わりに髪を切りたい」というのは顕在ニーズです。ここで終わってしまうと、キャッチコピーは「技術力のある美容師がいます」という、ありきたりな内容になってしまうでしょう。

そこで考えるべきが顕在ニーズの背景にあるジョブ(潜在ニーズ)です。

今回のケースでは「週末にデートがあり相手におしゃれだと思われたい」「仕事終わりに気軽に立ち寄ることで休日は趣味の時間にあてたい」などとなります。

具体的なジョブを踏まえることで、キャッチコピーは「技術力のある美容師がいます」から「あなたのデートを成功に導く技術力のある美容師がいます」と、クリエイティブの訴求力がより増しますよね。

このように「顧客が何に困っていて、なぜ買うべきなのか」というストーリーを描くことが重要なのです。
ジョブを押さえることで、LPや自社メディア、営業のトークスクリプト、購買後のカスタマーサクセス(顧客が自社商材を使って課題を解決するためのフォロー)など、マーケティングだけでなく営業活動全般のストーリーを描くことができ、成果の向上に貢献することが可能です。

顧客のジョブを掴むためのインタビュー

顧客のジョブをきちんと理解するのは簡単ではありません

先述したミルクシェイクの例では、クリステンセン氏がヒアリングをするまで、フレーバーやトッピングに関するアンケートしか取っていませんでした。表面的なアンケートでは、顧客自身も潜在的なニーズを説明できないため、ジョブを理解するためにはインタビューが望ましいです。

もちろんインタビューの際に「どうして購買をしようと思ったんですか?」と直球で質問をしてもジョブを聞き出すことはできません。

質の高いインタビューをするためには「ジョブの種類」と「顧客が購買に至るまでのステップ」を理解しておく必要があります。

はじめにジョブの種類について紹介しましょう。

ジョブには「機能的」「社会的」「感情的」の3種類がある

クリステンセン氏は「ジョブには3種類ある」と説明しています。
それぞれのジョブの内容を理解することで、インタビュー時の質問に活かすことができます。
機能的なジョブ
そのプロダクト・サービスの「機能」を利用することで、満たされるジョブになります。
とあるカフェのコーヒーを例に挙げて説明していきます。

コーヒーを購入する機能的なジョブには
「眠気を覚ましたい」
「サンドイッチを食べる際に喉に詰まらないように水分がほしい」
などがあります。

つまりコーヒーとしての機能を求めるジョブです。

社会的なジョブ
これは「周りから◯◯と見られたい」という願望を指します。

同じ例で説明すると、コーヒーそのものの機能を求めているのではなく、
「そのカフェの店内でコーヒーを飲むことで『おしゃれな人だ』と見られたい」
といったジョブです。

他者の目を意識したジョブと言い換えることもできるでしょう。

感情的なジョブ
これは「自分が◯◯と感じたい」という願望を指します。

「コーヒーを飲みながら散歩をすることで気持ちよく歩きたい」といったジョブが当てはまります。

自分の感情にフォーカスしたジョブです。

顧客が購買に至るまでの8ステップ

続いて顧客が商品を購買し(商材によっては)リピートする8つのステップについて紹介します。

顧客は何かのタイミングで上記の3種類のいずれかのジョブを思いつき、購買(ハイア)することで解消しようとします。

ジョブ理論では顧客が購買し(商材によっては)再購入する流れを「計画」「情報収集」「準備」「確認」「実行」「監視」「修正」「完遂」という8ステップで解決するとしています。

先述したミルクシェイクの例でいうと以下の表のようになります。

ミルクシェイクの例

上記の例は実際にミルクシェイクを購入した場合の話ですが、この8つのステップを知ることで「購入に至らなかった場合にどこが問題だったのか」を把握することができるようになります。

例えば、「情報収集」のステップで、ネット検索したものの自分のお店が表示されなかったことで購入してくれなかったのであれば、SEO施策が有効であることが分かりますよね。

また、一度購入はしたが「監視」のステップで、「ミルクシェイクが甘過ぎて自分には合わなかったと」いう理由で継続購入してくれなかったのであれば、商品改良が必要になってくるかもしれません。

この8つのステップに沿ってインタビューをしていくと、自社商品・サービスの強みや課題が見えてきます。

3つのジョブと8つのステップを踏まえての「インタビュー項目」

では最後に「3つのジョブと8つのステップ」を踏まえたインタビュー項目を確認しておきましょう。

マーケティング施策の方向性にもよりますが、主に以下の項目を重視して質問しましょう。
1〜5は流れになっていますので、この順番で聞くのがおすすめです。

1.その商品を使って最終的に何を成し遂げたい?または周りからどう思われたい?
2.1を満たすために、いま何が不足している? 何を解決したい? そのためにどんな機能が必要?
3.1を成し遂げるうえでの障壁は? なぜ不満が解消されない?
4.商品を買う前後にどんなことをした? 購入前に口コミなど見た? (計画からの8ステップを意識して聞く)
5.実際に比較対象となる他の商品・サービスは何かがある?

このインタビューを行うことで、顧客が自社の商品・サービスを買う本質的なニーズが少しずつ見えてくるはずです。

まとめ

今回は顧客の本質的なニーズを掴むために知っておきたい「ジョブ理論」についてご紹介しました。

自社の商品・サービスがなぜ求められているかを知ることで、マーケティング施策にも生かせすことが可能です。冒頭で紹介した通り、広告やLPのクリエイティブ、SNSやメールマガジンの訴求文、追加すべき機能、ボタンの文言など、ジョブを盛り込むことで顧客が「自分ごと」のように感じてくれます。

もちろんマーケティング施策だけではありません。
顧客が継続利用してくれるための施策や、ビジネスモデルの変更などに関しても顧客のジョブが大きく関わってきます。

冒頭でも書きましたが、ビジネスを成功に導くために「顧客」はいちばんに考えるべき存在です。だからこそ「顧客が自社の商品・サービスのどこに魅力を感じているのかを何となくしか分かっていない」というマーケティング担当の方は、一度ジョブ理論を活用して顧客にインタビューをしてみてください!

また、インタビューの他には診断コンテンツも有効です。診断コンテンツを活用した実際の事例については以下の記事を参考にしてみてください。

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