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オウンドメディアとは?成功事例から考える自社メディアを持つ意義。
オウンドメディアとは自社で所有し管理するメディアのことです。近年、その需要は高まっており、運用に成功すれば集客強化や広告費用削減など様々なメリットがあります。そんなオウンドメディアについて、実際の成功事例や運用の注意点について解説します。
更新日:2024/11/12 公開日:2022/02/18
オウンドメディアとはその名の通り「自分(自社)で運用するメディア」のことで、近年注目されているマーケティング施策の一つです。
2021年春の調査結果では8割近くのマーケターがオウンドメディアに注力していると答えており、企業内でも重要な位置づけとして認識されるようになってきています。
参考リンク:「オウンドメディア運用に関する調査」の結果を発表。8割がオウンドメディアに「注力」、企業ブランディングを目指す。
オウンドメディアが注目されるようになった理由には、以下のようなメリットがあるからだと考えられます。
・24時間365日稼働の代理営業ツールとなる
・記事を通じて有益な情報を提供することで企業の信頼度・好感度が上がる
・完全に社内運用した場合は外注費用をかけずに成果を生み出せる
オウンドメディアの運用に成功し安定した集客が見込めるのであれば、リスティング広告などに依存する必要がなくなるため、広告予算を削減できる可能性もあるのです。
著名な経済学者ピーター・ドラッカーは「マネジメント」という著書にて「マーケティングの理想は販売を不要にすること」と定義しており、マーケティングの目指すものは「顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすること」と説明しています。
オウンドメディアはこの理想に近づけるポテンシャルを秘めていますが、必ずしもメリットばかりではなく、数々のデメリットや注意点も潜みます。
オウンドメディアの運用を成功させるためには、集客面で言えば「オウンドメディアと他メディアとの相乗効果を意識した設計」、戦略面で言えば「企業ブランディングも踏まえたオウンドメディア運用」が必要になってきます。
この視点がなければ、無作為に記事を乱造するだけで何の成果を生み出すこともできません。結果として、途中でオウンドメディア施策を止めてしまいコストを無駄にしてしまうばかりか、企業イメージを損ねてしまうリスクもあります。
本記事では、できるだけ多くのマーケターがオウンドメディア運用を成功に導けるように、オウンドメディアの位置付けや目的を明確にし、運用に失敗しないために注意しておくべきポイントをご紹介します。
目次
オウンドメディアの位置付けを理解するための「トリプルメディア」
オウンドメディアは「トリプルメディア」と呼ばれる3つの種類のメディアのひとつです。
トリプルメディアは「ペイドメディア」「アーンドメディア」「オウンドメディア」に分かれ、それぞれ性質や目的が変わってきます。
※「トリプルメディア」は日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が2010年に宣言したフレームワークです
トリプルメディアは必ずしも対立するわけでもなく、それぞれの目的やリーチしたい顧客に合わせて選ぶことが重要です。
ペイドメディア(Paid Media)
「ペイド(お金を払う)」という言葉からもわかる通り、広告・宣伝を行うにあたって、費用が発生するメディアのことを指します。
既存のマスメディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など)や、Web上で展開されているニュースサイト、YouTubeやGoogleなどの巨大プラットフォーマーへの広告出稿も広義ではペイドメディアに含みます。
ペイドメディアは既に多くの視聴者や読者を確保できていることが多いため、ユーザーに短期間で接触することが可能です。また大手マスメディアであれば、データ提供まで行っていることにより、効果を測定しやすいこともメリットといえます。
一方で、莫大な広告費がかかったり、広告出稿までの審査が厳しいなどのデメリットもあります。
アーンドメディア(Earned Media)
ソーシャルメディアなどの外部メディアのことを「アーンドメディア」と呼びます。
「アーンド」は「信用を得る」という意味があり、主に「Twitter」「Instagram」などのSNS、また個人運営のブログ媒体が代表例です。
自社で商品・サービスを売り込むことなく、個人メディアを持つインフルエンサーに依頼することで顧客(見込み客)から信頼や知名度を得る目的で使われます。
ただし、企業以上にインフルエンサーやそのファンであるユーザーに主導権があることが多いため、思い通りの反応が返ってこなかったり、炎上につながるリスクもあります。
また、自社の社員にアーンドメディアを運用させることで、企業ブランディングに成功している事例もあります。
その場合は、
・企業名を看板に背負って個人的な情報発信をする
(運用担当者が複数人いたり入れ替わることもある)
・個人として運用しているが企業名を公表していて結果的に宣伝効果をもたらしている
の2パターンに分かれます。
オウンドメディア(Owned Media)
オウンドとは「自ら所有」することを意味するため、オウンドメディアとは自社で所有し管理するホームページやブログを指します。
企業の看板を掲げたオウンドメディアの運用に成功すれば、読者に対して自社ブランドを認知してもらうことができ、企業イメージの向上にも繋がるはずです。さらにペイドメディアやアーンドメディアでの集客に依存する必要がなくなるため、広告費用削減にも期待できます。
オウンドメディアの種類としては、課題解決コラムでユーザーの役に立つ記事を主軸にすることもあれば、スタッフ・社長自身の目線で書かれた記事を中心にして社風が反映されるブログ風のメディアもあります。
自社がオウンドメディアを通じて成し遂げたいゴールによって、どういったメディアを構築するか慎重に見極めましょう。
オウンドメディアの成功事例
「オウンドメディア」と言われてもイメージが湧かない方に向けて、オウンドメディアの成功事例を分析や解説も交えてご紹介していきます。
ベースフード(健康食品)
完全栄養食品「完全食 BASE FOOD(ベースフード)」のオウンドメディア展開について紹介していきます。
ベースフードは必要な栄養素が詰められた食品ですが、ペルソナとしては「忙しいので食事にこだわれないが、栄養と味のバランスにこだわりたい」といったニーズを抱えている人が想定されていると思われます。
その証拠としてベースフードのオウンドメディアでは、コンビニで販売されている食品と合わせて食す手軽なレシピのみが厳選されており、想定しているターゲティングや消費行動が明確であることが伺えます。
また、ベースフードの公式サイトトップページにInstagram投稿の埋め込みがあることからしても、アーンドメディアとの連携による拡散効果も視野に入れたマーケティング戦略が練り込まれていると分析できます。
オウンドメディアの立ち位置が明確で、アーンドメディア(SNS)との連携もよく設計されており、ブランド認知にも貢献しているという意味で、マーケターが注目しておきたい会社の一つです。
freee(クラウド会計ソフト)
会計ソフト「freee」のオウンドメディア運用についてもご紹介していきます。
freeeは機能性や利便性を追求したUI/UXのサービスではあるのですが、特筆すべき点は、サービスや経理に関するお役立ち記事が作り込まれているという点です。
たとえば「freee+(疑問や悩みに関するワード)」で検索すると、オウンドメディア記事が上位表示されるため、SEO対策がしっかりと為されていることが見えてきます。
その他にも経理関連の検索ワードでも上位表示されるため、「経理に関する悩みならfreee」という第一想起が形成されているとも考えられます。
また、経理に関する悩みを検索するようなユーザーには、freeeがメインターゲットとしている「スモールビジネスの経営者」も一定数含まれると想定されます。
オウンドメディアのマーケティング戦略上の役割
次に、マーケティング戦略から俯瞰した際に、オウンドメディアがどのような役割を持つのかを確認していきます。
集客チャネルの強化
まず、真っ先にオウンドメディアの役割や目的として挙げられるのが「集客チャネル」の強化です。
オウンドメディアを立ち上げることで、ペイドメディアへ依存していた集客チャネルから徐々に広げていくことができます。
リスティング広告のように費用をかけて出稿するものではないため、うまく運用できれば自社内で完結するメディアであり、広告費の削減にもつながるでしょう。
ブランドイメージの形成
オウンドメディアには「企業・サービスのブランドを形成する」という重要な役割もあります。
「第一想起」と呼ばれる「〇〇の会社ならここ!」というイメージを多くの見込み客に抱いてもらうことが、オウンドメディアの真の目的となることもあるのです。
前述の事例の通り「健康食ならベースフード」「会計ソフトならfreee」と、社名認知と扱う商材を多くの見込み客に覚えてもらうことで、段階的に新規顧客を確保することが可能となります。
顧客との関係づくり
オウンドメディアの魅力は集客やブランディングだけに留まりません。真価を発揮するのは顧客との関係づくりにおいてだと言えるでしょう。
アーンドメディア(TwitterやnoteなどのSNSプラットフォーム)を中心にオウンドメディアの集客を行う場合、SNSにてリアルタイムで記事の反応をもらえることもあります。
反応をくれたユーザーのアカウントデータを遡っていけば「どのような人が自社メディアを読んでくれているか?」の発見が得られるため、読者像が浮き彫りになるはずです。
そこで得た読者像は、「注力する記事ネタやカテゴリーをどれにするべきか?」といったメディア方針を検討・修正する際の参考情報にもなります。
また、読者が記事を評価してくれれば、引用リンク付で記事をSNS上で紹介しくれる読者が現れることもあります。単なる読者を越えて「協力者」としての関係を築き上げられる可能性をオウンドメディアは秘めているのです。
通常、ビジネスにおいては顧客と個別に話し合うことで関係を深めていきますが、オウンドメディアでは「不特定多数とメディアを通してコミュニケーションしていくことで、読者との関係を作っていく」ことができます。
ナレッジ(知見)の蓄積
オウンドメディアには顧客へのアプローチだけでなく、社内でのノウハウ・ナレッジ(知見)の蓄積も兼ねることができ、社員およびクライアントへの共有ができるという側面もあります。
通常、情報漏洩の観点から社内でのナレッジの蓄積は、セキュリティ対策の為された社内Wikiで運用されていたり、場合によっては書類で管理されていることもあるでしょう。
しかし、オウンドメディアとして不特定多数向けに公開することで、自社の知見の高さをアピールすることができます。
さらに顧客の悩みや疑問に対する問い合わせをメディア内の記事だけで解決しやすくなるため、有人対応が必要な問い合わせを減らすことも可能です。
このようにオウンドメディアにナレッジを蓄積させておくことで、集客からの売上に繋がるのみならず、自社社員や顧客との知見の共有により相互にリテラシーレベルを高めていけるのです。
言わば「顧客と共に成長していくメディア」となり得るポテンシャルをオウンドメディアは秘めているとも考えられますね。
オウンドメディアを運用する際のデメリットやリスク
集客効果だけなくマーケティング戦略上も重要な位置付けになり得るオウンドメディアですが、実際に制作して運用するにあたっては様々なデメリットやリスクがあるので、見切り発車は禁物です。
オウンドメディアの成功にはSEO施策やSNS集客が必須
オウンドメディアを構築して記事を考えもなしにアップしていくだけでは、高い集客効果は見込めません。
オウンドメディアを既存顧客向けのお悩み解決記事として運用する場合などはそれでもよいかもしれませんが、多くの場合は新規顧客獲得や認知拡大を目的にしているはずです。
その場合、「SEO対策」は必ず必要となります。
SEO対策については以下の記事をご覧ください。
また、SEO集客だけでなく「アーンドメディア(SNS)による集客・情報拡散」も効果的です。
SNSによる拡散や集客は一時的でSEO対策と比べて継続性には欠けますが、オウンドメディア立ち上げ後のSEO効果が出るまでの集客や、SNSでのフォロワー獲得による見込み客の確保、情報拡散によるオウンドメディアの認知効果などには期待できます。
オウンドメディアとアーンドメディアを組み合わせて集客することも考えておくのがおすすめです。
もちろん最終的にはSEO対策によって検索流入を確保することが継続的な集客につながり、オウンドメディアの真価を発揮できるため「オウンドメディアとSEO対策はほぼセット」であると認識しておきましょう。
短期で利益を上げるのが難しく中長期での計画が必要
オウンドメディアは短期で利益を上げるためのものでなく、中長期での計画的な運用が必要です。
短期間で不特定多数にアプローチに期待できるペイドメディアと違い、オウンドメディアはじわじわと流入数を伸ばしていき、見込み客を確保していく必要があります。
そのため、短期的に見込み客を獲得したいという課題に対しては、オウンドメディアは向いてないと言えるでしょう。
その場合は、マス広告やリスティング広告を検討してみてください。
繰り返しになりますが、オウンドメディアの主な集客方法となる「SEO対策」自体は短期で効果が出るものではないため、短期的な成果を追い求める必要がある場合には、オウンドメディアは不向きです。
メディアイメージが悪いと企業ブランドに傷がつくリスクあり
オウンドメディアの運用に失敗すると、企業イメージが悪くなりブランディングに失敗する要因ともなり得ます。
有名な事例で言えば、2016年にDeNA社が運営する「WELQ」などの多くのキュレーションメディアが問題となりました。多くの記事が非公開となり、果ては役員報酬の減額など会社の社会的責任が問われる事態にまで発展したニュースを見聞きしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この事例の問題点としては「生命や人生に関わる医療系の情報で信憑性に欠ける情報が多数掲載されていた」ことに加え、キュレーションメディアとして「専門家でない外部ライターが書いた質の低い記事が検索上位に表示されていた」ことが社会問題としても取り沙汰される流れになったと考えられます。
残念ながら、このWELQの事例のように「記事の品質よりも集客確保を優先するあまり、企業イメージを損なうオウンドメディアになってしまった」という失敗事例は明るみに出ないだけで数多く存在します。
そのため、オウンドメディアを運営する以上は、企業イメージ・ブランディングについてもしっかりと考慮した上で取り組むようにしましょう。
ディレクションを担える人材や専門記事を執筆可能な人材を確保する必要あり
オウンドメディアを実際に運営するにあたって、自社が扱いたい記事題材に対応できる専門ライターを確保することは重要です。
また、校正業務でメディア方針を統一できるディレクションが行える人材を確保する必要がある点も注意しておくとよいでしょう。
潤沢なリソースが社内にない状態でオウンドメディアを運用する場合、他のマーケティング業務と兼任して運用することが大半になるかと思いますので、上手く社外リソースを活用するのがポイントです。
またリソースはあっても社内にSEOに関する知見が不足していると、成果を創出することが難しいため、オウンドメディアの立ち上げから軌道にのるまでをマーケティング支援会社に手伝ってもらい、最終的に自社内で運用可能にしていくという方針も検討しておきましょう。
まとめ
以上、オウンドメディアのご紹介になりましたが、いかがでしたでしょうか?
本記事の内容を、もう一度まとめておきます。
1.「トリプルメディア」それぞれの性質や役割を理解した上でオウンドメディアの位置付けを把握する
2.マーケティング戦略上のオウンドメディアの目的を理解してメディア方針を決める
3.オウンドメディアの主な集客手段となる「SEO対策」への理解を深める
4.場合によっては「SNSによる集客・拡散」もオウンドメディアと組み合わせる
5.オウンドメディア運用上のデメリットやリスクを踏まえておき、適切な運用方針の設定やリソース確保を行う
マーケティング施策を行うにあたって失敗しないためには「目的設定」が特に重要です。
中長期での取り組みが求められるオウンドメディアだからこそ、目的を明確していくことは必要なのです。
今回ご紹介したようなオウンドメディアの立ち位置や目的を理解した上で運用していけば、少なからず、企業イメージを損ねることなく、成果に繋がるオウンドメディアへと近づいていくはずです。
ピクルスでも、今まさにお読みいただいている「ブログ」をオウンドメディアとして運用しています。
「明日のマーケティングは、今日の発見から。」
というテーマで様々な記事を掲載しておりますので、ぜひ他の記事もご覧ください。
想定される活用シーン
ライター:新田 拓也
デジタルマーケティングコンサルタント
来歴:小売販売→SEO集客/WEB解析→DX/デジタルマーケティングコンサルティング ※記事内容は株式会社ピクルスによる校正・編集が行われており、著者の見解と異なることがあります。 著者情報およびマーケティング見解については https://takuya-nitta.com/ をご覧ください。