ストレスチェックは、2028年4月1日から労働者50人未満の事業場でも義務になります。 これまで50人未満は努力義務でしたが、2025年の労働安全衛生法改正で義務に変わり、2026年6月の政令で施行日が確定しました。
50人未満に課されるのは「年1回の実施」と「高ストレス者への医師の面接指導」です。 一方で、労働基準監督署への実施結果の報告は、50人以上の事業場と違って求められていません。実施するのは医師・保健師などの資格者で、社内だけで完結させるのは難しいため、国は外部機関への委託を勧めています。2026年2月には、小規模事業場向けの公式マニュアルも公表されました。
▼ うちは報告が要る?施行までに何をすればいい? 報告の要否と、施行までにやることを、10問で整理できます

▼ 厚生労働省の実施マニュアルが示す尺度から作成したストレスチェックはこちら。※テンプレートで作成も可能です

ストレスチェックの義務化はいつからか
2028年4月1日(令和10年4月1日)です。 初回の実施は、施行から1年以内の2029年3月31日までに行う必要があります。施行日までは、50人未満の事業場はこれまでどおり努力義務です。
厚生労働省の「こころの耳」は、次のように案内しています。
令和7年の労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務とされていた労働者数 50人未満の事業場(「 小規模事業場」)におけるストレスチェックの実施が義務とされました。(令和10年4月1日施行) ——厚生労働省「こころの耳」ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)
根拠となる法律は、2025年5月14日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)です。公布の時点では、施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされていました。その後、2026年6月10日に公布された政令(令和8年政令第195号)で、2028年4月1日に確定しました。
誰が対象になるのか
人数は「会社」ではなく「事業場」ごとに数えます。 本社に100人いても、30人の営業所は50人未満の事業場として扱われます。2028年4月以降は人数にかかわらず実施が義務になるため、どの事業場でも準備が必要です。
50人はどう数え、誰が受検するのか
混同しやすいのが、事業場の人数の数え方と、実際にストレスチェックを受ける対象者の違いです。人数はパート・アルバイトを含めて数えますが、受検の対象になるかどうかは契約期間と労働時間で決まります。
考え方 | |
|---|---|
事業場の人数(50人の判定) | 契約期間や労働時間ではなく、常態として使用しているかで数える。短時間のパート・アルバイトや、派遣先で働く派遣労働者も含む |
受検の対象者 | 契約期間が1年未満の人や、週の労働時間が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者は対象外(4分の3未満でも、おおむね2分の1以上の人には実施が望まれる) |
50人の判定は、2028年4月以降も労働基準監督署への報告義務の有無に関わります(後述)。
パート・アルバイト・派遣社員はどうなるか
パート・アルバイトは、上の条件を満たせば受検の対象になります。雇用形態の呼び方ではなく、上の表の条件に当てはまるかで判断します。派遣労働者のストレスチェックは、派遣元の事業者が実施します。
▼ 50人の数え方と、受検の対象者は別のルールです。自社の場合がどうなるかを、10問で確かめてみる

なぜ50人未満まで広がったのか
小規模な事業場でも、プライバシーを守って実施できる環境が整ったと国が判断したためです。 2015年に制度が始まった際、50人未満が努力義務にとどめられたのは、小さな事業場では結果の秘密を守る体制を組みにくいという理由でした。
その後、厚生労働省の検討会で「外部機関を活用すればプライバシー保護に対応できる」と整理され、義務化に至りました。50人未満の事業場に外部委託が勧められているのは、この経緯によるものです。
ストレスチェックは誰が実施できるのか
実施者になれるのは、医師・保健師と、国が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師です。 事業主や人事担当者が実施者になることはできません。
この研修は、労働安全衛生規則第52条の10第1項第3号の規定に基づいて厚生労働大臣が定めるものです(こころの耳)。
社内だけで完結できるか
多くの50人未満の事業場には産業医がいないため、社内だけで実施体制を組むのは現実的ではありません。国は健診機関などへの外部委託を勧めています。2026年2月の公式マニュアルも、外部委託の活用方法を中心にまとめています。
委託した場合も、事業者としての役割は残ります。実施の計画と社内への周知、委託先との調整、高ストレス者からの面接指導の申出の受付などは、人事や総務の担当者が担うことになります。
実施しなかった場合の罰則はあるのか
実施しないこと自体に対する直接の罰則はありません。 罰則が話題になるのは、主に50人以上の事業場に課されている報告義務です。ただし実施が義務であることに変わりはなく、労働基準監督署の是正指導の対象になります。従業員の心身の不調を放置したとして、安全配慮義務(従業員が安全で健康に働けるよう配慮する義務)の違反を問われるリスクもあります。
誤解が多いのは報告義務です。厚生労働省の実施マニュアルは、次のように示しています。
ストレスチェックの実施結果の労働基準監督署への報告は、労働者数 50 人以上の事業場に義務付けられていますが、労働者数 50 人未満の事業場は不要です。 ——厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
50人以上 | 50人未満(2028年4月〜) | |
|---|---|---|
実施 | 義務(年1回) | 義務(年1回) |
労働基準監督署への実施結果の報告 | 義務。報告しない場合は50万円以下の罰金の対象(労働安全衛生法第120条) | 求められていない |
高ストレス者への医師の面接指導 | 本人の申出があれば義務 | 同じく義務 |
集団分析 | 努力義務 | 努力義務 |
※2026年9月時点の情報です。施行に向けた省令・通達の改正で変わる可能性があります。
何を聞くのか(調査票の項目)
法令が求めるのは「3つの領域」を含むことで、決まった質問票はありません。 3つの領域とは、仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポートです。実務の標準は、厚生労働省が推奨する57項目の調査票です。
実務では、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)が標準的に使われています。負担を減らした23項目の簡略版や、働きがいなども測れる80項目版もあります。高ストレス者の選び方や集団分析の基準が57項目を前提に用意されているため、特別な理由がなければ57項目を選ぶのが一般的です。
調査票はどんな観点を聞いているのか(担当者自身が体感する)
制度の説明を読むより、一度答えてみるほうが中身をつかめます。所要時間は5分ほどです。担当者ご自身が1人の受検者として、調査票がどんな観点を聞いているのかを体感する参考にしてください。
厚生労働省の「こころの耳」では、職業性ストレス簡易調査票に基づくセルフチェックを公開しています。
質問は全部で57問です。(所要時間約5分間) ——厚生労働省「こころの耳」5分でできる職場のストレスセルフチェック
診断クラウド「ヨミトル」で作成した「仕事のストレスチェック」(無料・セルフ版)でも、観点を体感できます。18問・3択で、9つの尺度(質的・量的負担、コントロール度、活気、疲労感、抑うつ感、からだのサイン、イライラ感、不安感、上司・同僚のサポート)ごとの目安が出ます。

実施の流れ
実施は6つのステップで進みます。 事業者が決めるのは体制と社内への周知で、結果を本人に通知するのは実施者です。高ストレス者の面接指導と集団分析は、その後に続きます。
実施体制とルールを決める — 委託先と実施者、社内の担当者を決め、実施方法を社内ルール(規程)にまとめる。厚生労働省のモデル規程を編集して使える
従業員に周知する — 目的、実施時期、結果の取扱いを事前に伝える
調査票に回答してもらう — 紙またはWeb
結果を本人に通知する — 結果は実施者から本人に直接通知される。本人の同意がない限り、事業者には提供されない
高ストレス者の面接指導 — 本人から申出があれば、医師による面接指導を実施する
集団分析と職場環境の改善(努力義務) — 部署などの単位で結果を集計し、職場の傾向をつかむ
集団分析については、特定の個人を識別できない方法で行うことが、労働安全衛生規則に明記されました。 施行は2027年4月1日です(令和8年6月30日付け基発0630第2号)。集計の単位が10人を下回ると個人が特定されるおそれがあるため、厚生労働省は小規模な事業場について次のように示しています。
特に、事業場自体が小規模の場合には、10 人以上のより大きな集団を構成するよう工夫した上で、集団分析を実施するようにしてください。 ——厚生労働省リーフレット(ストレスチェックの集団分析に関する省令改正)
小規模事業場向けの公式マニュアルには何が書かれているか
2026年2月、厚生労働省は50人未満の事業場向けの実施マニュアルを公表しました。 外部委託の活用方法から社内規程の例まで、小規模事業場が実施するための手順がまとめられています。目的は次のように示されています。
労働者数50 人未満の小規模事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法等についてのマニュアルを作成いたしましたので、公表いたします。 ——厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表します
主な内容は次のとおりです。
外部委託の活用方法
実施者の要件
調査票と面接指導
地域産業保健センターとの連携
集団分析とプライバシー保護
不利益な取扱いの防止
モデル規程
単独の小規模事業場だけでなく、商工会や協同組合などの業界団体を通じて実施する場合にも参考になります。50人以上の会社の営業所・工場・店舗のような、分散型の事業場でも使える内容です。
2026年3月には、要点をまとめた概要版(スタートガイド)も公開されました。社内規程の例をそのまま編集して使えるモデル規程(Word形式)とあわせて、厚生労働省の50人未満の事業者向けページで入手できます。準備を始めるなら、まずスタートガイドから読むのが近道です。
費用はどのくらいかかるのか
外部委託の費用は、委託先とサービスの範囲で大きく変わります。 公的な相場の統計はないため、この記事では金額を示していません。比べるときは、1人あたりの単価だけでなく、次の項目が含まれているかを確認してください。
調査票の配布と回収(紙かWebか)
結果の個人通知
高ストレス者の面接指導(医師の手配)
集団分析と報告書の作成
国の無料の支援もあります。厚生労働省版のストレスチェック実施プログラムは無料で使えます。また、50人未満の事業場は、全国約350か所の地域産業保健センター(地産保)で、医師による面接指導や相談などの支援を受けられます。費用や利用の条件は、各センターに確認してください。
受検率が上がらないときは
従業員に受検の義務はないため、強制はできません。 事業者ができるのは受検の勧奨です。厚生労働省のマニュアルも、特別な事情がない限り全員が受けることが望まれるとしています。受検しないことを理由に不利益な取扱いをすることは認められていません。
受検をためらう理由の多くは、「結果を会社に見られるのではないか」という不安です。次の点を実施前に伝えると、受けてもらいやすくなります。
目的は職場環境の改善で、人事評価には使わないこと
個人の結果は本人に返り、本人の同意なく会社には渡らないこと
所要時間(57項目なら数分程度)
業務時間内に受けてよいこと
参考として、厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果を紹介します。メンタルヘルス対策に取り組む事業所のうち、ストレスチェックを実施している割合は、労働者50人以上で89.8%でした。30〜49人では57.8%、10〜29人では58.1%です。小規模な事業場ほど、これから体制をつくる段階にあります。
測ったあと、何をするのか
ストレスチェックは「測る」ための制度です。職場を変えるのは、その後の取り組みです。 集団分析で特定の部署に負担の偏りが見えたら、業務量の見直し、管理職向けの研修、ハラスメント防止の取り組みなどにつなげます。
50人未満の事業場では、同じ担当者が複数の義務を担っていることも少なくありません。2022年4月からは、中小企業にもパワーハラスメントの防止措置が義務化されています。2026年10月1日からは、カスタマーハラスメントと就活セクハラへの対策も事業主の義務に加わりました。
研修を実施しても、内容が身についたかを確かめる仕組みがなければ、取り組みの効果は見えません。
研修の理解度は、ケース問題(「これはハラスメントに当たるか」)を使った確認テストで測る方法があります。判断の基準を職場でそろえるきっかけにもなります。測り方は次の記事で解説しています。
▼ 研修やチームづくりに、まずは既成の診断を使ってみるなら。V-CAP® 16タイプ診断を、人数を伝えて届いたURLを配るだけで使えます

施行までに何をしておくか
2028年4月から逆算して準備します。 最初にやるのは、事業場ごとの人数の確認と、厚生労働省のスタートガイドを読むことです。以下は目安です。

時期の目安 | やること |
|---|---|
今〜 | 事業場ごとの人数を確認する/公式マニュアルとスタートガイドを読む |
施行の1年前ごろ | 外部委託先を比較して選ぶ/費用を予算に組み込む |
施行の半年前ごろ | モデル規程を使って社内ルールを整える/従業員へ周知する |
2028年4月〜2029年3月 | 初回の実施(施行から1年以内) |
よくある質問
Q. 従業員が10人未満でも義務ですか。 はい。2028年4月1日以降は、人数にかかわらず実施が義務になります。
Q. 従業員はストレスチェックを受けなければいけませんか。 受ける義務はありません。厚生労働省のマニュアルは、特別な事情がない限り全員が受けることが望まれるとしています。受けないことを理由に、配置・昇進・評価などで不利益な取扱いをすることは認められません。
Q. 役員も受ける必要がありますか。 対象は労働者です。役員は原則として対象外ですが、労働者を兼ねる役員などは実態によって判断されます。
Q. 結果は会社が見られますか。 個人の結果は本人に通知され、本人の同意がない限り事業者には提供されません。
Q. 実施しないと罰金がありますか。 実施しないこと自体への直接の罰則はありません。罰金の対象になるのは50人以上の事業場の報告義務違反で、50人未満の事業場には報告は求められていません。ただし実施そのものは義務です。
Q. 自社で作ったチェックリストで代わりになりますか。 なりません。法定のストレスチェックは、資格を持つ実施者のもとで、3つの領域を含む調査票によって実施する必要があります。
まとめ
2028年4月1日から50人未満の事業場も義務化(令和8年政令第195号で確定)。初回は2029年3月31日まで
人数は事業場ごとに、パート・アルバイトを含めて数える。受検の対象者は別のルール
実施者は医師・保健師などの資格者。50人未満は外部委託が現実的
実施しないこと自体に直接の罰則はなく、50人未満は労働基準監督署への報告も求められていない。ただし実施と面接指導は義務
調査票は3つの領域を含むことが要件で、57項目が標準
2026年2月の公式マニュアルと、3月のスタートガイド・モデル規程が準備の土台になる
測ったあとの職場環境の改善と、研修の効果の確認までが取り組み
▼ 福利厚生・健康経営で使うストレスや健康の診断も含めて、人事の場面別に診断テンプレート16種をまとめています

▼ 社内向けのチェックやテストを診断形式でつくりたい方は、お気軽にご相談ください

診断クラウド「ヨミトル」についての詳細はこちら









